(前号から続く)
横断歩道で待っている歩行者を発見して止まるためには、手前で減速するだけでは足りません。横断歩道周辺に広く視野を確保した安全確認が不可欠です。
昔のドライバーは前方の道路上しか注視していませんでしたが、それでは横断歩道周辺の歩行者を発見できません。止まるためには、視野を広く取って、横断歩道周辺を確認する行為が必要になります。
止まるためには、横断歩道手前での減速と、横断歩道周辺への安全確認という、二つの運転行動が必要ですが、特に横断歩道周辺への広い確認行動は、信号交差点における自転車・歩行者との事故を回避する効果を持っています。右折の場合、対向車ばかりに気を取られ、対向車の切れ目にあわてて右折し、その先の横断歩道で自転車・歩行者と衝突する事故、そして、左折する場合の左後方からの自転車・歩行者との事故に対しても、横断歩道周辺を広く確認することによって自転車・歩行者を発見し、事故を回避することができるようになります。
つまり、信号機のない横断歩道で歩行者が待っていたら必ず止まる、この運転行動は、他の交差点における歩行者・自転車との事故を防ぐ効果も期待できるのです
ならば、それを実現しなければなりません。それは私にとって、果たすべき義務なのだと考えたのです。
しかし、道路交通法で定められているとはいえ、大半のドライバーが知らない違反であるならば、まずは周知徹底を図ることが必要です。検挙することが目的ではなく、交通環境を変えることが目的だからです。
それから約3ヶ月、横断歩道で歩行者が待っているときは一時停止義務があり、止まらないと違反であることについて、あらゆる手段・方法で広報して取締活動に移行しました。
とはいえ、検挙件数を増やすことが大切なのではなく、市民・ドライバーに周知し、運転行動の変化を促すことが目的であるため、管内全域の交番勤務員に対して、1日10件の目標を示しつつ、これ以上検挙する必要がないことも指示しました。
しかし、検挙活動を始めたとたん、様々な人から批判やお叱りをいただきました。
(次号に続く)